2014.02.17
K2013で見たヒート&クール技術
K2013で見たヒート&クール成形技術
1.K2013について
Kショウは3年に一度開催される世界最大のゴム・プラスチック展示会であり、2013年10月16~23日にかけてドイツのデュッセルドルフで開催され、世界中から約22万人の参加者を集めた。
本レターではK2013に出展されていたヒート&クール成形技術(金型加熱冷却技術)についてまとめて報告する。
2.ヒート&クール成形技術について
ヒート&クール成形技術とは、射出成形の成形サイクル内において金型加熱と金型冷却を繰り返して行う成形技術を表す一般名詞である。日本国内では一般的にヒート&クール成形技術と呼ばれているが、欧州ではvariothermという呼び方が一般的であるが、Hofmannの登録商標である。
方式には、加熱・冷却媒体切替方式、電磁誘導加熱方式、電気ヒーター加熱方式、ハイブリッド方式等が知られている。
3.展示・実演内容
今回は前回(K2010)にも増して、ヒート&クール成形技術の実演・展示が多く見られた。温調装置のメーカーでは、RocTool、SINGLE、gwk、Unibell、Wittmann Battenfeldが成形実演を行っていた。
RcoToolは電磁誘導加熱を用いたヒート&クールシステム開発企業であり、大幅に小型化されたインダクションユニットの展示も行っていた(図1)。RocToolのシステムはENGELのブースにおける炭素繊維強化樹脂シートへの熱可塑性樹脂のオーバーモールディングにも用いられていた(図2)。Trexel Inc.のブースにはMuCell(微細射出発泡成形)とRocToolのヒート&クール技術の組合せによるピアノブラック成形品が展示されていた(図3)。
図1.RocToolの小型化された電源ユニット(左)と説明パネル
図2.ENGELブースにおける炭素繊維強化シートインサート・オーバーモールディングの実演
図3.Trexel Inc.のブースに展示されていたMuCellとヒート&クール(RocToolの方式使用)組合せによる製品
gwkは、電気ヒーター方式、媒体切替方式の装置を製造している。今回は水を使わずに加熱媒体として加熱された二酸化炭素ガス、冷却媒体として液化二酸化炭素を用いるプロセス(vario gt)を提案し、レンズの成形実演を行っていた(図4)。加熱媒体として二酸化炭素を用いることで、配管内のスケールや腐食を防ぐことができる。二酸化炭素はヒーター加熱とコンプレッサによる圧縮で2.6 MPaまで昇圧される。KraussMaffeiのブースではgwkの温水タイプの温調器を用いてMuCellとヒート&クール技術の組合せ成形の実演が行われていた(図5)。
図4.gwkブースで実演されていた二酸化炭素による金型加熱冷却プロセス(vario gt) 左上:加熱工程、右上:冷却工程、下:透明成形品
図5.KraussMaffeiブースで成形実演されていたMuCellとヒート&クールの組合せ技術 上:成形品、下:gwk温調装置の温度設定画面
韓国のUnibellはStieler Kunststoff Serviceのブースでガスプレスとの併用でemCoプロセスの成形実演を行っていた。emCoは金型の水管内に棒ヒーターを仕込み、加熱時には上流と下流の弁を閉じて閉鎖空間を形成し、閉じ込められた水をヒーターで加熱、冷却時には上下流の弁を開いて通水する技術である。加熱時には非常に高圧になるため、頑丈なバルブが取り付けられている(図6)。
図6.STIELERブースで実演されていたガスプレスとemCoプロセスの組合せ
左上:大きなバルブを備えた金型、右上:emCo及びガスプレス装置、下:ピアノブラック成形品
Wittmann Battenfeldのブースでは窒素ガス発泡成形とBF MOULDの組合せ及びBF MOULDを用いたピアノブラック成形品を行っていた(図7)。
図7.Wittmann Battenfeldのブースで成形実演されていたサンプル
上:発泡成形とヒート&クール(BF-MOULD)の組合せによる成形品
下:BF-MOULDによるピアノブラック成形品
SINGLEのブースではATTプロセス(Alternating Temperature Technology)でピアノブラック成形品の成形実演を行っていた(図8)。
図8.SINGLEブースで成形実演されていたピアノブラック成形品
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