2014.02.17

グリーン・モールディングの実現に向けて (6)

グリーン・モールディングの実現に向けて (6)

前回の記事より続く。

◆水質によるトラブルを解消するソリューション (2)

私たち松井製作所は、成形工場の資源節約パートナーとして成形工場の「factor4」の実現を提言しております。製造行程における様々なムダを無くし、成形工場の資源生産性を4倍にする事を目指しております。

前回は「水質によるトラブルを解消するソリューション」の前編、工場で発生している水周りに起因するトラブル事例と、配管詰まりのメカニズムを、開放型クーリングタワーの冷却の仕組みを通してご説明致しました。

開放型クーリングタワーでは、循環水と外気を直接接触させ、循環水の一部が蒸発する事で冷却しているため、循環水の中に溶けない成分が濃縮、配管内に析出されていく。その、成分の濃縮を発生させないため、密閉型クーリングタワーが考案された。という所まで、お話しましたが、密閉型クーリングタワーにも、まだ問題が残っていました。

ここで再び、開放型と密閉型のクーリングタワーの仕組みの絵を見てみましょう。
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ご覧の通り、密閉型クーリングタワーでは、工場内に戻る循環水については、外気に触れる事が無く、水が蒸発しないため、成分の濃縮はおこりません。そのおかげで、装置のトラブルは激減するでしょう。この点においては、密閉型クーリングタワーは、とても良い装置だと言えます。

工場内で使われている装置の、水質に起因するトラブルはこれでほぼ解消されたと言って良いでしょう。しかし、もっと困った問題が他にあったのです。

冷却の仕組みにおいては両タイプとも同様で、冷却水が外気に触れています。そのため大気中の粉塵や、植物の胞子、微生物等、様々な浮遊物が冷却水に入り込み、カビや藻、バクテリア、レジオネラ菌が大量発生する場合があります。それらの発生を抑えるため、また防腐・防錆に水処理剤を注入している工場も多いでしょう。

両タイプのクーリングタワーからは、水分が蒸発しているだけでなく、実はこれらの有害な成分が霧状になって外気に飛散しているのです。

どれ程の量の水が飛散しているのか、具体的に計算してみましょう。

小型のタイプ、能力 100RT の開放型クーリングタワーを使用しているとします。
循環水量の目安は、78トン/1時間程度、冷却水の飛散量は循環水の 0.1% 程度とすると、1日稼働して飛散する水量は、

78,000 (L) × 0.001 (0.1%) × 24 (h) = 1,872 (L)

100RT のタワー1台でも、2,000 リットル近い水が、毎日飛散している事になります。

つまり、開放型クーリングタワー、密閉型クーリングタワー、共に、稼働環境の近くで働く人々は皆、バイオハザード、ケミカルハザードの危機にさらされているのです。

水が綺麗な日本においては、こうした被害も少なく、あまり問題視されていませんが、水質の悪い地域、環境維持への取り組みに熱心な国々では、これらの問題に対応した、次世代のクーリングタワーである「ドライクーラー」が使われる様になってきました。実際、ヨーロッパの射出成形工場においては、既に8割がドライクーラーに切り替わっています。(伊 Frigel 調べ)

グリーンモールディング・ソリューション協会は、地球環境問題の解決、世界貧困問題の解消、そして成形品生産者の利益増大を同時に実現することへの貢献を目指しています。そのメンバーであるマツイが皆様にお勧めするのは、イタリア Frigel社のドライクーラー ‘ecobrid’ です。

このecobrid では、先に述べた、成分の濃縮、有害物質の飛散を、どの様に回避しているのでしょう。以下のイラストを御覧ください。

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工場への循環水については、密閉型クーリングタワーと同様外気に触れる事がありませんので、長期に渡りその水質は維持されます。開放型、密閉型と大きく異なるのは、その冷却方法です。両者は水を媒体として熱を逃していましたが、ecobrid では温度が下げられた空気を熱交換器に通過させる事で循環水の温度を奪います。ここがドライクーラーと言われる所以です。

外気温が低い時は、循環水が熱交換器を通過するだけで温度が下がります。外気だけでは温度を一定に保てなくなってくると上部のファンが回り、強制的に空気を通して温度を下げます。それでも十分に下がらなくなった時に初めて水が使われます。外気の入り口に設けられた高吸水フィルターに水が噴霧され、そこを通過する空気が冷やされます。

噴霧に使われる水は微量で、水道水を利用しますので、そこに有害物質は含まれず、水処理剤を追加する必要もありません。また、噴霧された水分は間もなく蒸発してしまいますので、藻やバクテリア等が繁殖する事もありません。

ecobrid が他のドライクーラーと比較して機構的に優れているのは、独自の機構(アディアバティックチャンバー)を設ける事で、熱交換器に直接水がかからない(空気が当たるだけな)ため、水に起因する装置の劣化が起こらないという点です。

ecobrid は、開放型、及び密閉型のクーリングタワーと比較すると、節水率はおよそ 95%、節電率はおよそ 25%、スケールや藻、バクテリア等の発生が無く、長期に渡りメンテナンスの必要性も殆どありません。投資分は1〜3年で回収可能です。更に、これまでのタワーは7年設計ですが、ecobrid は 20年設計と、およそ3倍の耐用年数を誇ります。

総合的に判断すれば、選択肢はおのずと決まってくるでしょう。

  • 株式会社松井製作所
  • ソリューション営業課 飯島 泰彦

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