2014.01.21
グリーン・モールディングの実現に向けて (5)
前回の記事より続く。
◆ 水質によるトラブルを解消するソリューション (1)
私たち松井製作所は、成形工場の資源節約パートナーとして成形工場の「factor4」の実現を提言しております。製造行程における様々なムダを無くし、成形工場の資源生産性を4倍にする事を目指しております。
前回は、エネルギーのムダを無くすソリューションについての後編、成形工場で稼働する装置、とりわけエネルギー消費の大きい乾燥機の問題点についてお話し、その問題を克服した、新しい除湿乾燥機 MJ5-i をご紹介いたしました。
今回は、水質によるトラブルについてのお話です。成形には欠かせない水周りの設備は、実は生産性や製品品質にも大きく関わる重要なポイントです。
皆様の工場、或いは提携先工場で「成形条件が安定しなくなってきた」「サイクルタイムが延びてきた」「金型温度調節機の故障が増えてきた」といったトラブルを耳にした事はないでしょうか。
実は、良い水質を継続して保つ事は、こうしたトラブルを防ぎ、一定の生産性を維持(水周りでトラブルのあった工場では生産性を向上)する事につながるのです。
それでは、工場の水周りでみられるトラブルを見ていきましょう。
一番わかり易いのは、サビ、スケール、スラッジ等の付着による配管の詰まりでしょう。水質管理がされていないと、程度の差こそあれ、多くの場合、配管の内側に何かが付着してしまいます。
何故この様な状態になってしまうのでしょうか?
地域によって異なりますが、水には、水に溶けにくい様々な成分が含まれています。主だったものとしては、ケイ酸(シリカ/石灰)、カルシウム、マグネシウム、油分やサビがあげられます。これらの成分が、管の内壁に付着してしまうのです。
一見綺麗に見える水でも、水質やその成分を確認してみると、機器に影響を及ぼす可能性が見えてきます。水質検査によって得られる数値から、どの様な結果が予想されるのか、JRA(日本冷凍空調工業会規格)を参照してみましょう。
水質検査をした結果が良好であれば、問題は起きない様に思われますが、先に紹介したトラブルは、多くの工場で発生しています。
綺麗な水のはずなのに、何故、配管内に成分が析出されていくのでしょう?
以下のイラストは、開放型クーリングタワーの冷却の仕組みを示したものです。開放型クーリングタワーは冷却効率に優れ、小型、軽量、安価であるため、多くの工場で採用されてきました。皆様も目にした事があるでしょう。
この冷却の仕組みに、配管詰まりの原因が隠れています。
開放型クーリングタワーでは、循環水と外気を直接接触させ、一部の循環水が蒸発する事で残りの水を冷やしています。モクモクと上がっている蒸気は、実は水周りの設備に影響を及ぼす成分を含まない水なのです。つまり、この水が蒸発し続ける事で、最初、極僅かだった様々な成分が循環水の中で濃縮され、配管内に析出されていくのです。
こうした問題を防ぐため、定期的な水の入れ替えや、水質を維持するための薬液注入、磁石投入、イオン交換、電気分解など、様々な対策が取られていますが、いずれも、手間、暇、コストがかかります。また、薬液注入した水の廃棄は簡単ではありません。
これらの問題を解決するために考案されたのが、密閉型クーリングタワーです。
以下のイラストは、密閉型クーリングタワーの冷却の仕組みを示したものです。
ご覧の通り、装置で使用する冷却水は閉回路を回っているため、循環水の成分の濃縮は起こりません。開放型と比較し、熱交換率が少し落ちますが(同性能を求めるならサイズが大きくなる)、循環水の水質が維持され、耐久性、静音性が上がっています。
開放型と比較して密閉型クーリングタワーはとても良い製品に見えます。実際その通りでしょう。しかしここにもまだ、少しの問題と改善策があるのです。
次号に続きます。
- 水質によるトラブルの解消