2013.12.17

K2013で見た微細射出発泡成形

K2013で見た微細射出発泡成形

K2013で見た微細射出発泡成形

1.K2013について

Kショウは3年に一度開催される世界最大のゴム・プラスチック展示会であり、2013年10月16~23日にかけてドイツのデュッセルドルフで開催され、世界中から約22万人の参加者を集めた。
本レターではK2013に出展されていた微細射出発泡成形技術についてまとめて報告する。

2.微細射出発泡成形について

微細射出発泡成形は超臨界流体(窒素あるいは二酸化炭素)を発泡剤として用いる物理発泡であり、平均気泡径100μm以下の微細な気泡を多数発生させる成形方法であり、軽量化、寸法精度向上、反り・ヒケ低減等の効果をもたらす技術である。プロセスを図1に示す。
図1.MuCellⓇプロセスの流れ図
図1.MuCellⓇプロセスの流れ図

微細射出発泡成形技術はMITで基本技術が創られ、Trexel Inc.が実用的な技術に仕上げ、MuCellⓇという商標で装置販売・技術ライセンスを行っている。

3.K2013における微細射出発泡成形の出展状況

Trexel Inc.のブースではMuCellⓇ用の新型の超臨界流体発生・供給装置が展示されていた。このタイプの装置はKraussMaffeiのブースでも成形実演に使用されていた。Trexelブースには多くの自動車部品が展示されていた。従来はエンジンルーム内の部品が多かったが、ドアトリムやインパネのサンプル展示が増えている。
図2.Trexel Inc.ブースにおけるサンプル展示
図2.Trexel Inc.ブースにおけるサンプル展示
左:ドアトリム
右上下:インスツルメントパネル

成形機メーカーであるKraussMaffeiのブースではMuCellⓇと金型加熱冷却技術の組合せにより、高光沢発泡成形品の成形実演を行っていた。
図3.KraussMaffeiブースで成形実演されていた高光沢発泡成形品(左)と新型超臨界流体発生・供給装置(右)
図3.KraussMaffeiブースで成形実演されていた高光沢発泡成形品(左)と新型超臨界流体発生・供給装置(右)

成形機メーカーENGELのブースでは、MuCellⓇ成形による発泡コア材の成形と表皮材の予備賦形、発泡ウレタンの注入を一つの成形動作で行う技術の実演を行っていた。
図4.ENGELのENGELのソフトタッチ複合成形システムの金型概念図(左)と成形品(右上:表、右下:裏)
図4.ENGELのENGELのソフトタッチ複合成形システムの金型概念図(左)と成形品(右上:表、右下:裏)

温調器・成形機メーカーであるWittaman Battenfeldのブースでは、CELLMOULDという物理発泡技術(発泡剤は窒素)と、BF MOULDという金型加熱冷却技術、HiP(いわゆるコアバック)の組合せ技術により高倍率で外観品質の良い成形の実演を行っていた。
欧州最大の研究機関であるfaunhoferのブースではMuCellⓇによるフリスビーの成形を行っていた。成形品の表面には全面にスワールマークが出ていたが、本来の開発ターゲットはカウンタープレッシャーや金型加熱冷却技術との組合せで表面品質を高めることたと言っていた。

4.微細射出発泡成形分野における技術動向

微細射出発泡成形の分野では、目に触れない場所に使用される部品の開発から、目に触れる部分に使用される部品への適用に向かっており、成形品表面のスワールマークを解消するためにカウンタープレッシャー、断熱金型、金型加熱冷却技術との併用検討が積極的に進められている。

5.感想

欧米企業においては、新しい技術を活用しようとするエネルギーを感じる。自動車部品の軽量化は生産時の材料低減のみならず、自動車が走る際のエネルギー消費低減が大きく、MuCellⓇ技術を広げることは地球環境保全に直結する。

  • 秋元技術士事務所
  • 秋元英郎

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